2011年9月アーカイブ

大きな転機を迎えました。

裁判は大きな転機を迎えました。

そもそも、この訴訟は、個人としての不安感と恐怖感とそれを引き起こした東電・政府に対する怒りと、今まで問題意識を持ちながら何もしなかった自分への反省から、「自分ができること」は何かと考えた結果、始めたものです。

素人が大企業の潤沢な資金をもった弁護団に勝てるとは夢にも思っていませんでしたので、正直言って、「酔っ払いオヤジががなっている」ぐらいの気分でした。しかし、訴訟提起がマスコミに流れた当初こそ中傷のコメントを多数見ましたが、このことを買ってくださる方も今まで相当数見て勇気づけられました。そこここに、好意的なコメントをしてくださった方、ありがとうございます。

勝てると思ってなかった裁判ですが、予想外のことがいくつかありました。

ひとつは、
一発くらわしたから素人としてはこれで上出来か、と思い始めていたところに答弁書を見て、怒り倍増したこと

もうひとつは、
原告弁護団の弁護士が福島原発の事故隠しを受けてできた第3者委員会などの第3者委員をしていた過去がわかって、これまた怒り心頭になったこと、

そして
今回受任してくださった紀藤先生を含め複数の弁護士さんが、「必ずしも負けが決まった裁判ではない」「弁護士がつくからには勝ちにいく」とおっしゃっていたこと

そのようなことから、やはりやれるところまで戦わなければ、と思うようになりました。

一方、このような裁判に素人が出るのは、駒の動かし方もマスターしていない素人が、プロ棋士と本気で勝負するようなものです。素人ですから、何が裁判の常識・定石で、法的にはどこが争点になっていて、どう立証すればいいのか、など基本的なことが分かっていませんから、ただ思いっきりコマを振り回して、うまくすれば一矢報いるぐらいのことを期待することぐらいしかできず、勝つのはかなり厳しいものがあります。

初志は、「素人でも、お金がなくても、一発いうことはできる!(言って一発かますだけなら)」 ということでした。大江健三郎さんが、「合法的にできるのはデモしかない」というようなことをおっしゃっていましたが、私は集団行動は苦手ですから、デモ行進などは参加したくなく、その私にもできる、一発が裁判だったわけです。

第3回公判で、裁判がもう自分の手に負えなくなっていて、それは必然的に敗色が濃厚なのを感じました。あんな連中に負けたくない、この局面を打開するためにはやはり弁護士さんに頼むしかないという思いが強まっていたのも事実で、でも、それは初志から離れることでもあります。

かなり悩みました。

お金だって、いくらかかるかわかりません。満額勝って10万円です。当たり前のことですが、弁護士さんの着手金にもなりません(そもそも、お金の問題以前に受けてくれる弁護士さんがいるかどうかすらわかりませんでした)。
1円でも私が勝てば、絶対に東電は控訴、上告するにきまっています。完全敗訴の状態で私が手を引かない限りは最高裁までいくのは目に見えています。
確かに、多くの被災者の方や貧困な諸外国の人々のように今日の生活に困っているわけではありませんが、1年後に安泰な生活ができることが予想できるようなお金持ちでもありません(少なくとも東電の従業員は1年後も安泰な生活ができることを疑っていないでしょう)。

黙っていれば1円もかからないのに、
弁護士さんに頼まなければ負けるだろうけど私の(仕事をさぼってねん出する)時間と1万円程度の実費で終わるのに、
自分の利益にならないのに(私にとっては)莫大なお金を出さなければならないのか、
もっといいお金の使い方があるのではないか、
一方で受けて下さる弁護士さんには足代にもならないお金でやっていただくことがあまりに申し訳なくも思い
初志を変えてまで、なぜ弁護士さんに頼まなければならないのか、、、結局それは、お金がないと裁判所に対してすら「おかしい!」と言えないということを意味します。「裁判を受ける権利」があると中学の公民で習いました。でも、この現実はなんなんでしょう。。。

悩みました。


悔しいのは、いくら裁判費用をかけても東電は痛くもかゆくもないことです。お金がなくなれば公的支援されますし、電気料金もされます。私の財布は痛みますが、原発関係の判断をした人たちの財布が痛むことはなく、結局国民の財布が痛むだけのことです。何が悔しいかといえばそれが私はそれが一番悔しいです。この裁判では勝ってもそこは解決できません。


でも、やはりお願いすることにしました。
自分は、子供たちのため、自分ができることをする。
それ以上でも、それ以下でもありません。

これが正しい選択なのかどうかは、わかりません。他の選択をすることができない以上、後世になっても判断はできません。

お願いすることを決めたときは、ほっとした気持と同時に、悲しい気持と、挫折感がありました。

いま、8人の弁護士さんたちが、お忙しい中、精力的に取り組んでくださっています。
それは、世の中捨てたものではないな、と、とても明るい気持ちです。

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